
ちょっとした調べ物などに、生成AIを使ってみたことがあるという方は多いでしょう。しかし「そもそも生成AIとは何なのか」と改めて聞かれると、意外と答えにくいのではないでしょうか。
私たちはこれまで業務で生成AIを活用しながら、神戸の弁護士や経営者団体など、中小企業の経営者を対象としたセミナーにも登壇してきました。参加者からは「どういう仕組みなのか」「自社の業務で何ができるのか」といった質問を多くいただき、まずは基本から知りたいという方が多いことを実感しています。
この記事では、これまでセミナーでお話ししてきた内容をもとに、生成AIの仕組みやできること、中小企業での利用状況、活用のためのルール作りなどを解説します。本格的にAIを使い始める前の基本的な知識として、ぜひ参考にしてみてください。
生成AIとは
生成AIとは、大量のデータから文章や画像などの特徴やパターンを学び、指示に応じて新しいコンテンツを作り出すAI技術の総称です。英語ではジェネレーティブAI(Generative AI)と呼ばれます。
セミナーでは、参加者の方から「ChatGPTと生成AIは何が違うのですか」という質問をいただくことがありますが、ChatGPTも生成AIの1つです。生成AIは技術の総称であり、現在広く使われているChatGPT、Claude、Geminiなどは、その技術を使った個別のサービスという位置付けです。
従来のAIとの違い
AI自体は、以前から私たちの身近なところで使われてきました。売上データの分析、写真に写っているものの判別、迷惑メールの振り分けなど、特定の目的に合わせて、分類や予測を行うのが従来のAIです。
一方、生成AIは、文章を書く、情報を要約する、翻訳する、画像を作るといった幅広いタスクに1つのサービスで対応できます。AIの役割が「情報を分類・予測すること」から「文章や画像などを新しく作り出すこと」へ広がったことで、ビジネスでもさまざまな場面に活用できるようになりました。
中小企業でも導入しやすい理由
生成AIには、もう1つ中小企業にとって重要な特徴があります。それは、使い始めるまでの手間や費用がほとんど要らないことです。
従来、自社の業務に合わせたAIを導入するには、データを集めてシステムを開発する必要があり、多くの費用や時間がかかりました。そのため、AIの導入は大企業を中心とした取り組みになりやすい面がありました。
生成AIの登場は、この前提を大きく変えました。開発元が膨大なデータで学習させた「今すぐ使えるAI」をサービスとして提供しているため、多くの生成AIサービスは、自社でデータやシステムを用意しなくても、アカウントを作れば基本的な機能を使い始められます。専門の部署や高度な知識を持つスタッフがいない会社でも導入しやすくなったことが、生成AIが注目されている大きな理由の1つといえるでしょう。
生成AIの仕組み

生成AIを利用するうえで、高度な専門知識は必要ありません。ただし、どのように回答を作るのか、なぜ誤った情報を出すことがあるのかを知っておくと、業務で使う際の注意点を理解しやすくなります。
次に続く言葉を「予測する」技術
文章を生成するAIの中核にあるのは、大規模言語モデル(LLM)と呼ばれる技術です。LLMは、膨大な文章を学習することで「この言葉の後には、どのような言葉が続きやすいか」というパターンを身につけています。質問や指示を受け取ると、そのパターンをもとに、次に続く可能性の高い言葉を1つずつ予測しながら、文章を組み立てています。
たとえば、「日本で一番高い山は」という質問には、学習したパターンから「富士山」という言葉が続く可能性が高いと判断し、「富士山です」と回答します。生成AIは、正しい答えをデータベースから取り出しているのではなく、その場で回答を組み立てているのです。
実は、この仕組みこそが、生成AIの得意なことと苦手なことの両方を生み出しています。
LLMだからこそ生まれる「もっともらしい誤り=ハルシネーション」
生成AIは、文章として自然な回答を作ることを得意としています。その一方で、正しい情報を参照できない場合でも、文脈に合う言葉をつないで回答を作ることがあります。その結果、事実とは異なる内容でも、もっともらしい回答として生成する場合があります。
このような現象は、ハルシネーション(幻覚)と呼ばれます。生成AIが意図的に誤った情報を伝えているのではなく、言葉を予測して回答を作る仕組みから生じるものです。そのため、文章が自然で分かりやすくても、内容が正しいとは限りません。数字や固有名詞、法律、制度など、正確さが求められる情報は、必ず別の情報源でも確認する必要があります。
こうした誤りを減らすために、生成AIサービスを提供する企業各社は、指定した資料をもとに回答するRAG(検索拡張生成)や、Web検索で最新の情報を補う機能を実装するなどの改善をおこなっています。ただし、これらはあくまで誤りを減らすための工夫です。言葉を予測して回答を作るという生成AIの仕組みそのものは変わらないため、ハルシネーションは、技術の進歩でいずれ解消される不具合ではなく、仕組み上、完全になくすことは難しい性質と考えられています。
実際、ChatGPTを開発するOpenAIも、ハルシネーションはすべての大規模言語モデルに共通する根本的な課題であると説明しています。
生成AIは「次に続く言葉やパターンを予測して回答を生成しており、それゆえに誤りが含まれることがある」という前提で付き合う技術だと捉えておきましょう。
生成AIでできること

生成AIが扱えるのは、文章だけではありません。画像や音声、動画などにも対応しており、活用できる場面は広がっています。
代表的なサービスを主にできることで分類すると、次のようになります。
| 種類 | できることの例 | 代表的なサービス |
|---|---|---|
| テキスト | 文章の下書き・要約・翻訳・情報収集の補助 | ChatGPT、Claude、Geminiなど |
| 画像 | イラスト・写真風画像・デザイン案の生成 | Midjourneyなどの専用サービスのほか、ChatGPTやGeminiにも搭載 |
| 音声 | 会議音声の文字起こし・音声入力による文章作成・読み上げ音声の生成 | Notta、Typeless、Aqua Voiceなどの専用サービスのほか、PLAUD NOTEのようなAI録音デバイスも |
| 音楽 | BGM・オリジナル楽曲の生成 | Sunoなど |
| 動画 | 短い動画の生成・映像素材づくり | Veo、Runwayなど |
| AIエージェント | ファイルの整理・資料作成・データ集計から、プログラム・業務ツールの作成まで、複数の手順がある作業をまとめて任せる | Claude Code、Codexなど非エンジニア向けのツールとして、Claude Cowork、ChatGPT Workなど |
こうしたAIサービスの登場によって、これまで専門のソフトやスキルが求められていた作業も、言葉で指示するだけで試せるようになりました。たとえば、チラシやSNS投稿に使う画像案を社内で複数パターン作って比較したり、商品紹介用の短い映像素材のたたき台を用意したりといったことも、外部に依頼せずに行えます。
また、最近では「AIエージェント」と呼ばれる、AIが自分で手順を考えながら作業を最後まで進めてくれるタイプのサービスも登場しています。表の最後に挙げた「AIエージェント」がこれにあたります。もともとはClaude CodeやCodexのようにプログラム開発の道具として広まった技術ですが、実際にはファイルの整理やデータの集計といった、開発以外の業務効率化にも広く使われています。Claude CoworkやChatGPT Workは、こうした使い方をエンジニアでなくても行えるようにしたサービスで、「このフォルダのファイルを種類ごとに整理して」と依頼するだけで、AIが計画を立てて作業を代行してくれます。
※こちらは2026年7月時点での分類です。生成AIのサービスや機能は数か月単位で変わるため、導入を検討する際はその時点で利用できる機能や料金、利用条件などを確認してください。
中小企業が効果を実感しやすい3つの業務
「ひとまず、生成AIを業務で使ってみたい」という方は、日々の仕事で手間がかかっている作業から試してみるのがおすすめです。
- 文章のたたき台づくり
お知らせ文やメール返信などの下書きを生成AIで作り、人が内容を整えます。 - 議事録の作成
会議の音声を文字に起こし、要点や決定事項を整理します。 - 情報収集の補助
制度や業界動向を調べる際の手がかりを集め、最後に一次情報で内容を確認します。
私たちも、こうした日々の作業に生成AIを取り入れています。「自分の手で行うには手間がかかる業務」を任せられるようになり、負担が軽くなったことを実感しています。
中小企業の業務における具体的なAIの活用方法については、中小企業の生成AI活用の始め方で詳しく紹介しています。
生成AIと人の役割分担
生成AIを業務で活用するときは、すべての作業を任せるのではなく、AIと人の役割を分けて考えることが大切です。
先述したハルシネーションのように、生成AIは、文章としては自然でも事実とは異なる内容を出力することがあります。また、画像や動画などの生成物の場合は、既存の著作物に似ていないか、サービスの利用条件に問題がないかといった確認も必要です。生成AIを業務で使う際は、内容の確認と最終判断を人が行うことを徹底しましょう。
AIに任せる部分と人が判断する部分を分けることで、作業にかかる時間を抑えながら、成果物の品質も保ちやすくなります。
中小企業でどれくらい使われているか

「自社と同じくらいの規模の会社でも、生成AIは使われているのか」。これは、セミナーでもよくいただく質問です。公的機関などの調査から、国内企業と中小企業の利用状況を見てみましょう。
国内で広がる生成AIの利用
総務省の「令和7年版情報通信白書」によると、日本で生成AIを使ったことがある個人の割合は、2023年度の9.1%から2024年度には26.7%へ増加しました。およそ4人に1人が、何らかの生成AIサービスを利用した経験があることになります。
同白書の企業を対象とした調査では、何らかの業務で生成AIを使用していると回答した割合は55.2%でした。メールや議事録、資料作成など、日常業務でも生成AIが利用されていることが分かります。
中小企業での導入・活用状況
一方、中小企業では導入がまだ一部にとどまっています。中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」では、AIを導入している企業は20.4%でした。
また、東京商工リサーチが実施している「生成AIに関するアンケート」では、2025年夏の調査で中小企業の52.4%が生成AIの活用について「方針は決めていない」と回答していました。2026年4月の調査ではこの割合が38.7%まで低下し、会社や部門として活用を推進している中小企業も23.4%から32.3%へ増加しています。様子見の姿勢は後退しつつありますが、それでもなお4割近くの中小企業では、活用方針が決まっていない状況です。
導入企業の83.2%が業務効率化を実感
注目したいのは、すでに導入した企業の手応えです。中小企業基盤整備機構の同じ調査では、AIを導入した企業の83.2%が、業務効率化の効果を実感していると回答しました。
導入すれば必ず成果が出るわけではありませんが、適した業務で活用すれば、負担の軽減につながる可能性があります。最初から広い範囲に導入するのではなく、自社の業務で小さく試しながら効果を確かめることが大切です。
中小企業が生成AIを活用するためのルール作り

生成AIを業務に取り入れるにあたって、最初に取り組みたいのが社内ルール作りです。先ほど紹介した調査では、2026年4月時点でもなお、4割近くの中小企業が生成AIの活用方針を「決めていない」と回答していました。一方で、同じ調査では「個人で活用していることもある」という中小企業が27.7%へ増加しています。会社としての方針がないままでも、従業員が個人の判断で使い始めている可能性があるのです。個人のアカウントに顧客情報を入力してしまうなど、ルールがないこと自体が情報管理上の問題を招きかねません。
まず決めておきたい4つのルール
最初から難しい規程を整備する必要はありません。まずは、次の4つを決めておきましょう。
- 入力してはいけない情報を決める
顧客情報、個人情報、契約内容、未公開の社内情報など、生成AIに入力してはいけない情報を明確にします。 - アカウントを複数人で使い回さない
アカウントの共有は、サービスの利用規約に反する場合があります。複数人で利用する場合は、人数分のアカウントを用意するか、法人・チーム向けのプランを検討します。 - 会社が認めたサービスを使用する
従業員がそれぞれの判断でサービスを選ぶのではなく、業務で使用してよいサービスを会社として決めておきます。 - 出力は人が確認してから使用する
数字、固有名詞、法律、制度などは信頼できる情報源と照合します。社外に公開するものは、表現や権利上の問題がないかも確認します。
無料で利用できるサービスでも、入力した情報の取り扱いや、生成した文章・画像の利用条件は異なります。業務で使う前に、各サービスの規約や設定を確認してください。
少人数で試し、段階的に広げる
ルールを決めたら、まずは1〜2名の担当者から使い始めてみましょう。役立った場面や使いにくかった点を記録し、その結果を社内で共有しながら、利用する業務や担当者を段階的に広げていくと、無理なく定着させやすくなります。運用の中で気づいたことがあれば、あわせてルールも見直していきましょう。
入力してはいけない情報の整理から、A4用紙1枚にまとめる社内ルールの作り方までを、中小企業の生成AI業務利用の注意点と社内ルールの作り方で詳しく紹介しています。
まとめ
この記事では、生成AIの仕組みやできること、中小企業での利用状況、活用のためのルール作りを解説しました。最後に、要点を振り返ります。
- 生成AIは、大量のデータから特徴やパターンを学び、文章や画像などの新しいコンテンツを作り出すAI技術の総称です。
- 文章を生成するAIは、次に続く可能性の高い言葉を予測しながら回答を作ります。そのため、事実とは異なる内容でも、もっともらしい回答として生成することがあります。
- 生成AIは文章だけでなく、画像や音声、音楽、動画も扱え、複数の手順がある作業をまとめて任せられるAIエージェントも登場しています。中小企業では、文章のたたき台づくりや議事録の作成、情報収集の補助など、日々の仕事で手間がかかっている作業から試すと効果を実感しやすいでしょう。
- AIを導入している中小企業は20.4%にとどまる一方、導入した企業の83.2%が業務効率化の効果を実感しています。
- 業務で活用する際は、入力してはいけない情報や使用するサービス、出力の確認といった社内ルールをまず決め、少人数で試しながら段階的に広げていくことが大切です。
生成AIには、向いている作業と向いていない作業があります。仕組みや注意点を理解し、AIに任せる作業と人が判断する部分を分けることで、業務に取り入れやすくなります。
最初から全社での導入を目指す必要はありません。まずは日々の仕事で手間がかかっている作業を1つ選び、少人数で試しながら、自社に合った使い方を見つけていきましょう。
参考資料
- 総務省「令和7年版情報通信白書(個人の生成AI利用)」
- 総務省「令和7年版情報通信白書(企業の生成AI利用)」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(2026年3月公表)
- 東京商工リサーチ「『生成AI』活用は企業の25%にとどまる」(2025年7月30日〜8月6日実施、有効回答6,645社を集計した企業向けアンケート調査)
- 東京商工リサーチ「『生成AI』大企業の約6割が組織で活用推進」(2026年3月31日〜4月7日実施、有効回答6,327社を集計した企業向けアンケート調査)
- OpenAI「言語モデルでハルシネーションがおきる理由」(2025年9月公開)
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株式会社ポケットは、神戸を拠点にホームページ制作・Webマーケティング支援を行っている会社です。自社の制作業務で生成AIを活用するとともに、弁護士会や経営者団体で、経営者向けの生成AIセミナーに登壇してきました。その経験をもとに、生成AIの導入支援や社内向け勉強会・セミナーのご相談にも対応しています。「どの業務から試せばよいか分からない」「社員向けに生成AIの基本や注意点を伝えたい」という方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。お見積り・初回のご相談は無料です。制作実績もあわせてご覧ください。